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漫画ルックバックは意味が分からない?藤野と京本の間のIF世界を理解する

2024年3月14日

漫画『ルックバック』は、チェンソーマンで有名な藤本タツキ先生が書いた読み切り漫画です。

チェンソーマンが「このマンガがすごい!2021」のオトコ編で1位を取りましたが、このルックバックは「このマンガがすごい!2022」のオトコ編で1位を取りました。

なんと藤本タツキ先生は2年連続1位獲得の快挙です。

ルックバックは小学生で漫画を描くことが好きな藤野と、不登校で学校に来てはいないけど絵が藤本よりも上手な二人を主人公に描かれています。

私も私の子供も読みましたが、内容が分かるような分からないような…

何か伝えたいメッセージが込められていることは分かりますし、それをはっきりと伝えず最後は読者の解釈や想像に任せていることも分かります。

でもそういった少し難解な内容に、読者の一部からは「意味がわからない」「内容が理解できない」「面白くない」とマイナスな評価をつける人もいるようで、賛否が分かれる作品のようです。

今回は内容の説明というよりも、どのポイントが分からないとされるのか、考えてみたいと思います。

ルックバックの意味が分からないとされる場面(ネタバレあり)

物語は最初は分かりやすく、特に引っかかるところもなく楽しく読み進めることが出来ますが、途中から時間軸が過去と現在、そして存在しないもう一つの現在が入り混じってくるところです。

そこからの話の展開が分かりづらいとされる原因だと思います。

きっかけは大学生になった京本が事件に巻き込まれて亡くなってっしまうところからです。

京本が亡くなったのを知った藤野が、引きこもりだった京本を外の世界に連れ出してしまったことが原因で亡くなってしまったと後悔します。

その後悔の想いから、京本が生きているもう1つの世界を生み出します。

IFの世界を理解する

このもう1つの世界は『IFの正解』

つまり、「もしも○○だったら」という世界です。

ここでは「もしも藤野が漫画を描かずに空手家になっていて、京本は引きこもりを辞めずに続けていたら」という世界になります。

このIFの世界でも京本は大学で襲われてしまい、ピンチになります。

しかしその時は空手家になっていた藤野が助けに入り、犯人を倒して京本は助かります。

そしてその後、物語は京本が助かった世界から、また本当の現実に戻って進んでいきます。

京本の部屋のドアの隙間がIFの世界との境界線

IFの世界と現実の世界がいったりきたりする漫画ですが、その世界の境界線となっているのが京本の部屋のドアの隙間です。

最初京本が死んだときに、後悔の念で自分が書いた4コマ漫画を京本の部屋の前で破り捨てるシーンでは、破り捨てた欠片がドアの隙間に入り込み、IFの世界に移ることになります。

京本が助かったIFの世界でも、京本が自分で書いた4コマ漫画が風に吹かれてドアの隙間に入り込んで部屋から出てしまい、この4コマ漫画が現実世界の藤野の元に届きます。

ドアの隙間から4コマ漫画が入りこむたびに、世界が切り替わっているのです。

この切り替わりのタイミングで、読者も頭を切り替えて理解していかないと、この漫画はなかなか理解は難しいと思います。

ルックバックを読む時に知っておくべき時代背景

この漫画を読む上で頭に入れておいた方がいいのは、2019年に起きた、「京都アニメーション放火殺人事件」です。

京アニの事件とのリンク

30名以上のアニメーターが亡くなった痛ましい事件ですが、その事件に対する鎮魂の思いを込めた内容になっているということを頭に入れて読み進めていくと、また少し物語の理解度が増します。

「京本」という名前は、「京アニ」からとったのではないかと考えられています。

京本が亡くなった大学は、実際に事件のあった京都アニメーションの建物で、京本を襲う犯人は、京アニを襲った放火魔と考えることができます。

もしも京アニの事件がなかったら、という想いになりますし、なかったことであってほしいという願望にも感じられます。

しかしルックバックのエンディングでは、最後に藤野が昔から好きだった漫画を改めて描き始めるシーンが描かれています。

このエンディングのシーンは、悲しいことはあったけれど、もしも京本が生きていたら喜んでくれるであろう漫画を、これからも描き進めることを決断した瞬間です。

京アニの事件でも、悲しい思いはしたけれども、亡くなった京アニの人達のために、また、京アニのファンや漫画のファンにこれからも喜んでもらえるように、前を向いて進んでいこうというメッセージが込められているように思います。

『ルックバック』というタイトルの意味

ルックバックとは振り返るという意味になります。

藤野が京本との過去を振り返りながら、現実とIFの世界を行き来しながら前に進んでいく物語であることから、『ルックバック』というタイトルはしっくりくるものはあります。

あとは、京アニの事件のことを忘れないという意味も、タイトルに込められているのではないかと考えられます。

悲惨な事件でしたが、時が経つにつれ、人々の記憶から少しずつ事件のことは薄れてきます。

ずっと重く受け止めて背負って生きていくことは辛いので、時間とともに記憶が薄れることで前に進めるということもあるかもしれませんが、忘れてはいけないという想いが『ルックバック』に込められているのではないでしょうか。

あとは、オアシスが歌う『Don’t look Back In Anger』という曲をオマージュしているという説です。

この曲は、オアシスの地元で起きた自爆テロの際に、その地域の音楽学校の生徒たちが歌った歌で、事件後の追悼式典でも参列者たちが合唱で歌った歌です。

そもそもこの曲はジョンレノンへのオマージュとして書かれた曲で、ジョンレノンといえば世界平和を歌ったアーティストです。

京アニの事件の後に、この曲で平和を祈るといった想いもあったように感じます。

作中では、学校の黒板に『Don’t look Back In Anger』の文字が隠れていますので、オアシスの曲のオマージュという説は確実だと思います。

まとめ

今回は漫画ルックバックの分かりづらいポイントを、私の考えを交えて紹介しました。

いろいろなメッセージが隠れていて、漫画の中にもまだまだ仕掛けや伏線が描かれている、奥深い作品です。

それ故に難しいと感じる人は多いと思いますが、今回紹介したような内容や作者の想いを組んで改めて読んでみると、隠れているメッセージを受け取りながら、なんとなく漫画の内容も理解できてくると思います。

藤本先生の才能があふれた作品になっていると思いますので、これからも何度も読んでその奥深さを感じ取ってみたいと思います。

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Posted by p-s